卬卯
2006年1月25日 kodo | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0)
柳とか、仰とか、迎とか、間違えるひとが多いですよね。
「ノ」をつけるかつけないかで迷うわけです。
卬と卯とは、音で区別するとわかりやすいようです。
ギョウ、ゲイ、ゴウ、コウ = 卬
リュウ、ボウ = 卯
カ行の音だったら卬、リュウ・ボウだったら卯です。
四月をあらわす卯月(うづき)の卯です。
卬(こう) 字統
卬は人が仰臥し、これを上から抑えている形である。
甲骨文については注を参照 *1卬は、ひとが向き合っている形なのですが、この向き合いかたが、ふたりがおたがいに立って向かい合うのではなくて、ひとりはひざまづいています。右側の卩のかたちがひざまづいているかたちです。左がわを向いているひとがひざまづいているわけです。
ひざまづいている人からみれば、「仰」ぐ。
立っている人からみれば、「抑」える。
となります。
手をつかってひとをひざまづかせるのが「印」という字です。
手でもって人を抑えて仰臥させるわけです。
印の左にあるのは「手」なのです。甲骨文では、やや左上にあります。
左側をむいているひとがひざまづいている、というのがおもしろいですね。*1
たとえば、「比」という字は、人がふたり並んでいるかたちです。
「卬」の左の形、立っている人が、ふたつあるのが「比」です。
「比」は、ふたりとも右を向いています。
左向きになると、「从」になります。これは、したがう、とよみます。
从は従の初文なのです。
ひざまづいているのではないのに、主従の従になるわけです。
「邑」という字があります。
これは口(い)と卩(せつ)とに従います。
![]()
口(い)は、都邑の外郭、城壁をめぐらしている形で、
下の卩(せつ)はひとですよね。ひざまづいているひとです。
邑は城中に多くの人がいることなんです。
邑のしたは、巴(は)ではありません。
まぎらわしいですが、
巴(は)は、器の把手(とって)のかたちです。
ちなみに「色」という字の下は、巴(は)ではなくて、卩(せつ)です。
上にある「ク」は人ですが、これが卩(せつ)を貫いているのです。
邑は口(い)+卩(せつ)です。
口というと、口(さい)という祝詞をいれる器であることが多いのですが、
城壁をあらわしていることもあるのですね。
「国」という字は、旧字は「國」と書きます。
じつは、なかにある「或」だけで「國」を意味します。
或の中にある口は、城壁をあらわしています。
くにがまえとまったくいっしょです。
邑の上の口といっしょです。
口が口(さい)ではないものに、「叩」という字があります。
この口は、「台」なのだそうです。
字通には
口+卩(せつ)。口は台の形。卩は人の伏する形で、叩頭の意であろう。頭をたれて叩かれる、ということのようですが......。
口(さい)でない口は他にもありますが、これはまた別の話としましょう。
邑は、漢字の一部分となるときには、「阝」となることが多いのですが、
この「阝」もちょっと曲者です。
部首としては、旁にあるときは、郎
邨郁郊邪などにつかわれる「おおざと」です。
じつは2つの意味があります。というより、まったく別物なのですが、
旁(つくり)にあるときには、邑(ゆう)
辺(へん)にあるときは、阜(ふ)
であることが多いのです。
甲骨文をみるとかたちが違うので一目でわかります。
阜 字統
神梯の象。神が天に陟降(ちょくこう)するときに用いる梯(はしご)で、この部に属する字は、もと神事に関するものが多い。
陟(ちょく)は、神が梯で天にのぼっていくことで、
降(こう)は、神が梯で天からおりてくることです。
「阝」は、まさに「はしご」の象形なわけです。
「隣」という字は、「阜(ふ)+粦(りん)」です。![]()
粦(りん)は人牲(ひとのいけにえ)をもちいているかたちです。
粦(りん)は、「大+舛」。大は人のかたち。舛は両足を開いているかたちです。
大の上下に点があるのは、鮮血なのだそうです。
神梯の前で行われる儀礼の、その聖地を「隣」というのです。
隣というのは、人牲を用いる聖地だったのです。
説文解字では、「鄰」として「粦(りん)+邑(ゆう)」としているようですが、
金文には「隣」、つまり梯子がちゃんとありますから、「阜(ふ)+粦(りん)」です。
卬(こう)と間違われるのが、卯(ぼう)という字です。
卯 字統
牲肉を両分する形。卜辞に犠牲を卯(ころ)す意に用いており、それが字の初義である。
卯には、両分の意があります。
貿や留などの上部にあるのは、卯のようです。
が、字統によると、留の上にあるのは、卯ではないようです。
このかたちには2つの意があるようです。
卯(ぼう)は、いけにえの肉を両分する形ですが、
丣(ゆう)は、水溜りをあらわしています。
貿の上部は、卯。
留の上部は、丣。
卯は、いけにえの肉を二つに裂くかたちですが、
貿は、二つに分けたものを「交換する、かえる」の意味に使います。
貝は子安貝で、貨幣としてつかわれました。
丣は留の省文です。留は水溜りの意になります。
丣は水流のかたわらに水溜りができているかたちです。
卯も丣もそっくりなんです。
私も違いがわかりません(笑)
「すばる」という字は「昴」ですが、
紛らわしいことに、「昴(ぼう)」は常用漢字ではありません。
人名用漢字にはなっているようです。
書経の尭典に
日は短く、星は昴なりとあるようで、これは仲冬に昴星がま南にあることをいうそうです(字統より)。
「昂」という字があって、こちらは常用漢字です。
昂、これは日の昇ることをいう字です。
卬=仰で、上を仰ぐ意から、日の昇ることとなります。
意気のさかんなことを軒昂といいます。
注
*1
甲骨文をみると、どうやら左側を向いているとはいえないようです。「卬」の甲骨文をみてみます。
例1![]()
例2![]()
例1のほうは、ひざまずいている人は右を向いていますし、右側にいるたっているひとも、右側を向いています。つまり向き合っているともいえないのかもしれません。例2のほうは、ひざまずいている人は左を向いていますが、立っている人は左を向いています。人偏とおなじかたちです。対面するということではなく、ひとりが立ち、ひとりがひざまずいている、ということが「仰抑」の意味からみてもだいじなことのようです。
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