「鹿」の書き方
2007年8月23日 kodo | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0)

「鹿」という字の草書は、覚えにくいものです。「塵」なども同様です。
「广」(まだれ)なのに、草冠のようなものを最初に書くのはなぜなのでしょうか。とても不可解です。おぼえかたとしては、
草冠 +「厂」+「比」
とおぼえると、書きやすいと思います。
「比」の草書は、「以」と同形です。
「以」は「ム+人」(隷書だと「口+人」)ですので、ほんとうは異なる字なのですが。
「厂」はきちんと「フ」と書きましょう。横の一角を大事にして下さい。
私は「鹿」よりも「塵」のほうによくお世話になります。
「塵」の場合は、
草冠 +「厂」+「坐」
です。

塵の字の「坐」ですが、「坐」の上の「从」。
「比」と「从」は、左向きか右向きかはありますが、人がふたりですので、草書ではおなじです。
「坐」を書く場合、点2つ+「土」と書く方もいますが、「比」の点は2つを左側に打って、合計3つ打つつもりになったほうがよいでしょう。
草冠は省略することがあります。
たとえば、「麗」という字。

「麗」の上部は、「琵」や「琴」の上部と同じ書き方をしますが、
その下の部分は、
「厂」+「比」
という書き方をしています。
上下の下になっていると省略するようです。「麓」も「林}+「厂」+「比」と書きます。
この鹿偏ですが、「麟(きりん)」のように、上下ではなくて左右にあると、草冠は省略されないようです。
「鹿」を部品とする字を字通で当たってみると、47字ありました。どんな草書になるか、「鹿」の部分がわかると想像できますね。

さて、どうして「鹿」字の草書は、
草冠 +「厂」+「比」
なのでしょうか。なぜ草冠がつくのでしょうか。
じつは
「サ」は草の意ではなく、牡鹿の角(つの)。
「厂」は「崖」の意ではなく、鹿の頭と胴体。
「比」は相比の意ではなくて、鹿の足。
だったのです。
「麗」の下の部分で、「サ」を省略したのは、鹿の角を省略したのです。篆書でも角はよく省略します。
「厂」の横の一角をしっかり書く理由も、篆書にあります。
鹿の頭部だからです。甲骨文を一度みてしまうと、この一角は粗末には書けなくなります。
さて、篆書をみてみましょう。

この字は石鼓文にある牡鹿の字です。
下の部分の筆順はどうなっているでしょう。
考えられるのは下の3種です。
| 1 | 2 | 3 |
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私は「1」の書き方をしていましたが、これからは2または3の書き方をしようと思っています。もちろんどの筆順でも間違いではありません。篆文で筆順を云々するのは実はあまり意味がないからです。
ちなみに石鼓文を精習した呉昌碩は、2の筆順です。形はアレンジしています。説文解字の字も2の筆順です。

| 呉昌碩 |
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この理由は、「鹿」字の甲骨文をみてみるとわかります。
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とっても凛々しく美しい(可愛い?)「鹿」の姿ですね。
甲骨文をみてみると、頸・胸・胴にかけて、胴体は一筆で書きたい気持ちになります。
2の筆順の最初に書いているのは、鹿の胸から胴体に当たる部分なのです。
そう考えると、説文解字も、呉昌碩の石鼓文も、胴体と尻尾が離れてしまって、鹿がかわいそうです。説文解字は、尾と後ろ足が頭から生えているように見えます。
改めて石鼓文をみると、その尻尾の部分のクリッとして実に可愛いらしいことに気づきます。
鄧石如の次のような書き方では、美しい鹿の胴体がわからなくなってしまいます。

また、右下の甲骨文を見てみると、頭にあたる部分は、「目」のようです。
「鹿」字の「广」と「比」の間にある「四」みたいなものは、じつは「目」なのかもしれません。
「牛」にしても「馬」にしても、目を強調してはいませんし、
「鹿」には呪力があると考えられていたのでしょうか。
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